6月、いよいよ梅雨の季節に入ります。
天候の悪い日が続くと、外で遊べる日が少なくなりますが、晴れた日は出来るだけ外へ
出て、遊びたいと思います。先日も、よく晴れて夏日になった日は、早速パンツ1枚に
なって、泥んこ遊びに夢中になっていました。子供達は遊びの天才! 梅雨の季節に入っても、きっと楽しい遊びを開拓するのではないでしょうか? そんな子供達が、思い切り夢中になって遊べるように、見守っていきたいと思います。
さて、私は3月の下旬に、デンマークという国の保育園視察研修、という機会を得ることができました。この研修は、日本から遠く、約1万キロメートル離れた、デンマークという国の政治・経済、その政策、教育や社会福祉への取組みを「見る、聞く、考える」というものです。
この研修の中で、特にデンマーク人の物の考え方に、深く感銘を受けました。デンマーク人の考え方は、すべてが、Demokrati(デンマーク語)に根ざしています。そう・・・・ 全てが・・・・です。
デンマークという国と、日本とを比較してみますと、政治や経済、政策、教育や社会福祉、などその取組み方がはっきり違っています。そして、その違いは、やはり、「考え方」に依拠することが大きいように思います。
デンマーク社会の根本は、Demokratiの考え方を基本として、「人」が中心の政策理念に基づいています。すべてがその考えから、発動されています。
私はデンマークの人たちが、どのような経緯を経て、Demokratiの考え方に至ったのか、その歴史的背景も含めて、とても興味を覚えました。
そして私たち日本人は、デンマークとの違いを、国の違い、「考え方」の違い、だけで終わらせるのではなく、日本の風土や文化を大切にしながら、他国の良さを取り入れていく方法を考えることも必要なことだと思いました。
今月のコラムでは、この研修の中の、特にデンマークの保育園について、私が、「見て・聞いて・話して」 感じたことなどを、ご紹介したいと思います。

目からうろこ ・・・・ うらやましい保育制度
3月22日(月)の午後、私たちはロスキレ市にあるサンクト・ヨアンセンスベヤグ総合保育園を訪問しました。そこで園長のクリステンさんから、デンマークの幼児保育の取組みについてお話をお聞きしました。
まず、デンマークの幼児保育の行政的な管轄は社会省が行うということで、これは他のヨーロッパ諸国とも異なるようです。
日本ですと、幼児教育の管轄は文部科学省、幼児保育の管轄は厚生労働省とはっきり分かれているため、「幼稚園」「保育園」と呼び方も違い、その施設の目的や役割もはっきり区別されています。が、デンマークの場合は、言語を日本語にする訳者によって、幼稚園・保育園とどちらにもなることを知りました。
次にデンマークの保育制度では、どの保育園も、国の統一された保育基本方針のもとで、すべてが自治体の運営で行われているということでした。国が求める保育施策目的を法律として作り、その目的が遂行されるよう、現場で最低限、施行すべき点を「枠」として発令する。そして、その「枠」をどのように埋めるかは自治体にまかされ、各自治体が住民のタイプやニーズを加味しながら、自治体独自の保育施策を進めていくということでした。様々な取組みがあるのですが、その例としては、保護者の労働形態(一般的には工場等の就労時間は朝6時〜午後2時、企業では朝8時〜午後4時)にあわせて、朝は6時30分から開き、午後は5時30分に終了するということ、園庭には大きな怪我にならない為の予防策として木のチップを敷き詰めることがどこの園でも義務づけられていること、保育費の公費が7割で、利用者負担が3割であること、また、保育園入園の待機児童を作らないための「保育ママ」制度が確立していること。
この保育ママは自治体の認可を得て、自宅で0歳から3才の幼児を5人まで保育することができ、自治体から給料が支払われる、また保育ママの子どもも園児とすることができ、自分の子どもの分も給料として支払われる仕組みになっているということでした。
さらには、保育園入園を待機しているために、祖父、祖母が自宅で孫を保育している場合でも、祖父母にはその為の補助金がでるということでした。 このように、園長先生は、保護者にとっても「信頼できる保育制度」がしっかりと確立されている中での保育園の役割について、熱く語ってくださいました。
「保育園の役割とは、一人ひとりの子供の教育をすること、そして、社会性を育てることです。その為に、保護者との話し合いをとても大事にしています。また子供同士の交流から子どもの社会性が育っていくのですから、子どもが何を訴えているかを読み取ること、子ども達が好きな環境を整えてあげること、子ども達が今何に夢中になっているかをみつけ、それを大事にしています。子どもが子どもらしく生活する中で、豊かな人間になっていくのです。そして、遊びや経験を通して子ども一人ひとりの発達を促し、その発達のもとで、自己決定や、自己責任を負う力を養っていきます。」
園長先生のお話に、大きく、大きく、うなずきました。
そして、さらに「なるほど・・デンマークらしい!」と納得した保育現場がありました。
お昼寝も・・・デンマーク風!
総合保育園のお昼寝場所は、屋外のようです。
ちょうど、私たちが見学に行った時間が、午睡時でしたので、その様子がよくわかりました。
保育室の外に乳母車があり、その中には、防寒具を着た赤ちゃんスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていました。乳母車の近くには保育士さんがいて、時々、乳母車を揺らしていました。
「寒くてもマイナス15度までは外で寝かせても問題ないだろう」と本に書いてあったということも聞きましたが、このような光景は、恐らく日本では見られないと思います。
日本の場合ですと、保育室の中で、風邪をひかせないようにと、むしろ暖かくして眠らせるのではないでしょうか?!
外でお昼寝をさせるのは、保育施設だけではないようです。一般家庭でもごく当たり前のことのようで、外でのお昼寝を習慣づけるということでした。赤ちゃんが起きた時や、泣いたことを知らせてくれる機械をつけて、自宅の庭先でお昼寝をさせている光景は、デンマークではごく普通のようです。そして、その機械は、デンマークでは赤ちゃんがいる家庭では必需品ということでした。
なぜ外でお昼寝をさせるのか。それは、
まず、外気に触れるということで、夜の眠りが深くなるということ、また、屋内の空気にはウイルスや細菌がたくさんあり、建材の化学物質で汚染されたりしているため、屋外の空気の方が清浄で子どもに良いということ。
また、外気に触れ、外気を吸わせた方が、肺が強くなり、抵抗力がつき、健康丈夫で健康な身体ができるということでした。
《 感 想 》
ヨアンセンスベヤク総合保育園に入り、園庭が目に入った瞬間、私は羨望のため息が出てしまいました。“なんて広い庭だろう。”
そればかりでなく、かくれんぼが楽しめそうで想像性を掻き立てる配置の植え込み、ゆったりおしゃべりを楽しめそうな東屋、無造作に置かれている三輪車など。日本で見る保育園の園庭とはどこか違う雰囲気を感じました。
子ども達が自由に遊びこんでいる場所であることを、その光景から察することができました。
また、園庭全体が砂場になっているような地面の軟らかさで、これなら転んでも怪我にはならないだろう・・・と思いました。あとの説明で、園庭の砂の下には木のチップを敷きつめることが義務付けられているという事を聞き、まさに、「人が資源である」という国の考え方が、それぞれの施設整備を充実させているのだろうと思いました。
「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」(ロバート・フルガム著)という本がありますが、デンマークの場合は、「Demokratiの初めの一歩は、幼稚園の砂場から始まる」というところなのでしょうか?!
またちょうど、イースターの時期ということで、園庭の一本の枯れ木には、日常生活で使われるような様々な道具が下げられていました。保育園の子ども達が製作した芸術作品でした。靴やTシャツなど下げられた物の中には女性の下着もあり、日本でこのような場面に遭遇したら、「なんと不謹慎な!」と、眉をひそめる大人もいるのではないかと思います。あの下着はお母さんからもらったのではないかしら?と想像するのですが、子どもに持たせたお母さんの心の大らかさや、枯れ木に飾ってしまった、くったくのない子どもの愛らしさが感じられて、あの枯れ木に下げられた光景さえも微笑ましく思えてしまうのですから不思議です。デンマークだからでしょうか・・! デンマークの国の考え方や生活、人なつこい笑顔にふれて、私も少し、心がリラックスしてきたのかもしれません。
ただ、園長先生のお話の中で「子供を尊重しすぎて、子どもに社会性がなくなってきた。子ども達にどのように社会性をつけていくかが課題です。」という言葉がありました。
日本でも似たような問題を抱えています。デンマークと日本の違いばかりが際立つのですが、それで終わるのではなく、同じ悩みを共有しながら、日本の幼児保育の向上に向けて模索する必要性を強く感じました。
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